自然周期は、薬の使い方のことだけではなく、特性をよく理解して卵巣機能に添い、LH値を読む力があること、そして緊急採卵に対応する態勢を整えていることが必要です。...②

おち夢クリニック 越知正憲先生のお話

2019年4月発行『i-wish ママになりたい 不妊治療と排卵誘発』

排卵済みで卵子が得られない! を防ぐために

 調節卵巣刺激の場合、排卵済みで卵子が得られないということを防ぐために早期排卵を抑制する薬を使います。ショート法やロング法の場合は、アゴニスト点鼻薬を。アンタゴニスト法の場合は、アンタゴニスト注射薬を使います。

 どのような方法で排卵誘発をしても、卵胞の成熟には自然な月経周期同様にLHサージが起こることが重要です。黄体化ホルモン(LH)が一過性に大量に分泌されることで卵胞は成熟し、これが排卵の引き金にもなります。

 調節卵巣刺激の場合、内因性のLHは早期排卵を抑制する薬で封じ込められているためLHサージは起こらず、採卵手術前に排卵してしまうことはありません。

 しかし、自然周期では、早期排卵を抑制する薬は使わないため、LHサージが起こります。採卵前の排卵を防ぐには、卵胞の大きさやLHなどのホルモン変化を敏感に読むこと、そして一人ひとり違う、排卵に至るまでのクセを知ること、また周期による思いもよらない変化へ柔軟に対応することが必要です。

 採卵手術のタイミングは、エコー検査やホルモン検査で確認して決めます。LH値に問題がなければ、排卵をコントロールするためにアゴニスト点鼻薬を使い、その32~36時間後に採卵手術を行います。

 しかし、検査の結果、LH値が若干高くLHサージが起こり始めている場合、またLHサージがピークに達している場合には、点鼻薬の使用方法を変更したり、時間をおいて再度LH値を検査して、採卵手術のタイミングを見極めます。

 LHサージがピークに達していて、6時間後の血液検査で値が低くなっている場合には、排卵が迫っていることが考えられるため、緊急に採卵手術を行います。

 このようにLH値を細やかに確認し、適切な処置をすること、また、緊急採卵手術を行う体制を常に整えておくことで、排卵済みで採卵手術ができないといったケースを1%以下に抑えることができています。


自然周期は一人ひとりと向き合う方法

 月経周期は、一人ひとり違います。卵胞の成長やホルモンの変化などのクセもあります。

 多くの薬を使って、卵胞を成長させたり、早期排卵を抑制したりすることで、月経周期の違いやクセは抑えられ、薬によってコントロールされます。

 けれど、薬でコントロールしなくても、一人ひとり足りない分を補ったり応援したりすれば、十分に卵胞を成長させる力を持っています。

 自然周期は、薬の使い方のことだけではなく、薬の特性をよく理解して、その人の卵巣機能に添うこと、LH値を読む力があること、緊急採卵に対応する体制を整えていることが必要不可欠です。

 私たちのクリニックでは採卵周期の年齢分布は40歳以上が半数以上を占めていますが、2017年は採卵は2077症例あり、胚移植は1502症例に上りました。

 そのうち妊娠数は742件で、妊娠率は49・4%、これは年齢に制限のない成績です。


自然周期は、薬の使い方のことだけではなく、特性をよく理解して卵巣機能に添い、LH値を読む力があること、そして緊急採卵に対応する態勢を整えていることが必要です。...①


おち夢クリニック 越知正憲先生のお話

2019年4月発行『i-wish ママになりたい 不妊治療と排卵誘発